2010年8月30日月曜日

高原の日々(1)


加藤周一に「高原好日」という信濃毎日に連載していたものをまとめた本があります。彼が軽井沢で友情を温めた人たちとの交遊の話です。彼が取り上げている人たちはわれわれが誰でも知っている人たちがほとんどですから読んで面白いわけです。例えば彼が旧制一高からの友達である中村真一郎のことを書けば、われわれはなるほど、「高度の知識人の軽井沢での交遊」とは斯くなるものかと読めるわけです。しかし、私の交遊といえば、「それ誰」という友達で、その友達が軽井沢で特別なことでもしなければ読者には通じません。今日も夏の雲をながめながら、何をどのように書けばそれなりの話になるかを考えていました。さしずめ、子供の頃の軽井沢といっても、この千ヶ滝と呼ばれる別荘地の周辺から始めなければならないでしょう。この軽井沢・千ヶ滝、最初の記憶は1945年終戦の前後あたりでしょうか。私たちはここに疎開したのですが、その前にもう少し楽しかったかすかな記憶があります。私は3才だったはずです。4才の夏は私は聖路加病院の別館に預けられていたので、軽井沢に来ていないのではないかと思うからです。千ヶ滝が最も輝いていた時期です。その頃のことを覚えている人には会っていないので、正確なことはないにもわかりませんが、残っている記憶の断片から拾ってみましょう。

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