2008年7月16日水曜日

都市の川


もともと都市の多くは川を基本に作られている。パリのセーヌ、ロンドンのテムズはその代表例であろう。東京の場合は大川と呼ばれた隅田川で、大阪が淀川となっている。都市の住人はこの川の近くに住み、この川を生活の友としてきた。都市住民の経済から文化まで川と結びついてきた。しかし、東京はどんどん広がり、隅田川からの距離は広がる一方である。そして、近くを流れる小さな川がささやかに都会人との出会いを待っている。この目黒川はその代表であろう。特に桜の時期には両岸に満開になった桜を多くの都会人が一生懸命に楽しんでいる。人々の顔にはこの桜の情景を必死で見ておこうという表情が見て取れる。川が都市にとってどのような役割を果たしているか検証がされているのだろうか。川が交通経済的な意味をもっていた時代には考える必要がなかった川の別の役割を認識しておく必要があった。人は川によって自分や建物の位置をはっきりさせることができる。景観は川によって決定される。そして、人は川の水によって癒される、川沿いを歩くことが気持ちがいい。川の流れを窓から眺められる部屋が喜ばれる。川沿いに家が建ち、川沿いにレストランがある。都市経済の発展過程で多くの川が埋め立てられたり、蓋をされ、道路にされた。そのために、どのような被害が都市住民に及んだかを研究したものがあるだろうか。ドイツではライン川が時々氾濫するのに堤防を作ろうとしない。日本と川の流れの速度が違うという人が多いが、それより、ライン川と人間の間に人工物を入れたくないドイツ人の自然感がある。私はスイスのバーゼルやドイツのザンクト・ゴア・ハウゼンの町で
ライン川に沿って何度も歩いて、ライン川が心を自由な気持ちにさせることを実感した。ライン川の場合は
そこを行き来する船の音も心に響く。

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