2013年4月7日日曜日

建築事務所モデル小説



松家仁之著「火山のふもとで」は建築事務所が夏の間、設計コンペの準備のために建築家の山の家に行く。所員は今年採用されたばかりの新人の「僕」入れて、山に来ているのは男6人、女性2人だ。先ず、この場所は北軽井沢の学者村の中か近くがモデルになっている。建築家は「先生」と呼ばれる吉村順三がモデルだという。「僕」の恋人になるのは「先生」の姪になる女性で彼女の親の別荘は旧軽にある。そして、「先生」のコンペのライバルになるのは丹下健三がモデルになる。

「先生」の山の家はどちらかというとレイモンドの「夏の家」か「新スタジオ」がモデルのような気がする。物語はコンペのテーマである”国立現代図書館”設計の日々が展開される。所長と所員による設計の考え方のやりとりなどかなり建築事務所の情景はそれらしく書かれていて、おそらく建築家が読んでも違和感がないだろう。

そして、エピソードとなる野上弥生子がモデルと思われる女性や千ヶ滝西区か大日向の方面にかなりの多くの農場をもっている「先生」と同年配の女性などはそれなりにうまく書かれている。

ただ、結末は全く素人が玄人の物書きを真似る陳腐な手法で書かれていてどうしようもない。コンペが結局,丹下健三がモデルになる人物が一等になるのだが、これは予想されるので当然としても、他のまとめ方はもう少しましな方法があっただろう。小説として考えるなら、夏の家を閉めて終わりにするか、「僕」と先生の「姪」などとのエピソードをそれぞれうまくまとめるか,余韻を残しておくかどちらかにするべきだろう。

「先生」をライトの弟子に設定したことは無理があり、これはすなおにレイモンドの弟子にした方が良かっただろう。アスプルンドの扱いは「僕」にひきつけてきれいに処理されていてこれは良かったと思う。

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