2010年10月18日月曜日

高原の日々(7)さらば千ヶ滝


12月に入って寒さが厳しくなり、沓掛の家も所有者がやってきて使うことになったらしく、一旦千ヶ滝に戻った私達家族3人も追われるように山を下りることになった。もちろん私は小さくてそのいきさつは全くわからず、ただ、母にすがっていただけだった。この時期から母の妹の叔母とその連れ合いとの間がうまくいかなくなったようだ。叔母の連れ合いはどういうわけか、千ヶ滝に一緒に来ていて、そのまま一緒にいたので、祖母に取り入って主人顔をしていたようだ。父が東京で働いているので母は孤立して結局皆のいうなりになっていたようだ。その頃の最大の働き手は女中さんと呼ばれたお手伝いさんで、家事に馴れない母は女中さんの助けがなければ動けなかった。とにかく千ヶ滝は寒くていられず、ある日の夕方全員家を後にしてその夜は星野温泉に泊まることになった。凍りついた坂道をやっとの思いで星野にたどりついたのだった。日が直ぐに暮れて暗闇になり普通なら30分も掛からないはずなのにずいぶん時間が掛かったような気がするが、これも何もわからない子供の頃のことであった。そして翌日、国鉄、沓掛駅から満員の列車に乗ったのだった。蒸気機関車がホームに入ってくる姿が強く記憶に残っている。その時は蒸気機関車の前にも人が乗っていたようだ。それからどこに行くのか心細い気持ちだったことを思い出す。(写真は今は亡き星野温泉旅館)

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