2009年11月14日土曜日

加藤周一「ある晴れた日に」


この本のスタート「土屋太郎は、落葉松の林の間にどこまでもつづく坂道を辿りながら・・・・」。軽井沢に長い人ならすぐにこの背景を思い浮かべることができるでしょう。これは4月ですが、軽井沢は今頃から4月頃まで半年、景色は変わりません。木の葉が落ちて、落葉松の林がつづく道が「歩くことの出来る人間」には限りない創造の源になるのです。「車で走りまわっている人間」には縁のない話です。加藤周一のただ一つの小説といわれているこの著作は、この落葉松林を抜けてグリーンホテルと思われるホテルに進んでいくのです。内容は重いものですし、加藤周一の基本的なテーマになるのですが、若い頃から軽井沢に過ごしていた彼の中に常に軽井沢の風景がバックにあることを感じないわけにはいきません。

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